樺山久夫
樺山久夫(本名・倉地久夫。倉地久美夫の実父)は全国を渡り歩いたエロ絵師で、その作品は全国の観光地(北海道夕張、九州の嬉野や別府市)に点在する秘宝館の壁画に、或いは神社の境内に、現存しないが昭和の大阪万国博覧会における自身のコーナー。或いはスポーツ新聞のエロ小説の挿絵などに残されている。
特にエアーブラシやスプレーを多用した心象風景的またはシュールな作風はエロスの甘い魅惑と相性がよく、秘宝館のいかがわしげなムード造りに重宝がられた。故に作品のテーマは一貫して「エロ」、カーマストーラや浮世絵を下敷きにした男根陰唇いり乱れるそれは額に入れられ明るい壁に掛けられるのを拒み、うす暗い部屋の中裸電球や紫外線ランプに照らされ好気の目にさらされる方を望んだ。
過去に自費出版によって日の目をみた見世物看板絵師の志村静峯や津崎雲山と同じく福岡が生んだ表美術界とは無縁の人達である。もっとも人の良さが災いしてか経済的にはあまり恵まれず「注文品の代金をウィスキー一本で誤魔化されることもあった」(倉地久美夫談)
晩年は画材によるシンナー中毒で倒れ19年没した。享年78才。老いてもなおエロ収集に余念のない人であった。ちなみに倉地久美夫のCD「うわさのバッファロー」ジャケに使用されている絵は樺山の手によるもの。樺山という画号も最初はバカ山という名前にするつもりが、家族の反対があり反転させたものだそうである。
※写真は嬉野秘宝館(2014年3月閉館)にて
樺山久夫が紹介されています。